徒然草・第109段
◇高名の木登りといひし男
油断大敵を吉田兼好風に言うとこうなる
木登り名人との評が高い男が、人に命じて高い木に登らせて枝を切らせていた。たいそう危険であろう場面では何も言わず、木から下りる段になって、軒先くらいの高さまで下りたときに「怪我をするな。気をつけて下りろ」と声をかけたので、
「これくらいは飛び下りても平気な高さだ。なのになぜそんなことを言うのか」と尋ねてみると、
「それですよ、目がくらむほど高くて枝も折れるかと思うような危険なときは、自身が恐怖心を持っているため何も声をかけない。怪我は安全なところになってから必ず起こすものなのだ」と言う。
身分の低い下賤な者ではあるが、聖人の戒めに通じるものがある。蹴鞠でも難しい球を上手く蹴り上げた後に、安堵してしまうと必ず球が着地してしまうそうだ。
徒然草・第110段
◇双六の上手といひし人に
ギャンブル必勝法
すごろくの名人という人に秘訣を尋ねたところ、
「勝とうとして打ってはいけない。負けぬと思って打つべきなのだ。どの手が早く負けてしまうかを考え、一目でも遅く負ける手に従うのがよい」と言う。
その道を知る者の教えであり、自分の身を正したり、国家安寧を保つ方法もまたこのとおりである。
徒然草・第111段
◇囲碁双六好みて明かし暮らす人は
第110段で言ったそばから全否定
「囲碁やすごろくを好んで日夜ハマってしまう人は、四重の罪や五逆の罪状を越える悪事をしているのだと思うのだ」とある僧侶がおっしゃったことが、今でも耳に残っており、すばらしいことだと感じられる。