徒然草・第77段
◇世中にその比
地獄耳でおしゃべりな人は自覚がないようです
世間でそのころ話題になっていることを、関係ない人がその内部事情をしたり顔で他人に語って聞かせ、また別の人に問い正したりしているのは理解できないことだ。
特に片田舎の僧侶などは、世間の人の身の上話を自分のことのように尋ね聞いて、どうやってここまで知ってるのかと思えるくらいに喋り散らすようである。
徒然草・第78段
◇今様の事どもの珍しきを言い広め
これは普段から気を付けておきたい
最近起きた珍しい話を言い広めて持て囃すことこそ受け入れがたいことである。完全に世間に広まってしまうまで知らずにいる人は奥ゆかしいものだ。
新参者がいるときに仲間内だけで通じる話題や言い回しなどを一部だけ言い合って目を見合わせては笑い、話を読めない人が何が何だかわからないという思いをさせることは、情けなく頭の悪い人が必ずやることである。
徒然草・第79段
◇何事も入りたたぬさましたるぞよき
要はべらべらしゃべるなということ
なんでも立ち入らずに知らない振りをするのがよい。教養のある人が、知っていることだからと言って物知り顔で語ったりするだろうか。逆に片田舎から上京したような人は全てのことに詳しい素振りをするものである。そのため話を聞いている方が全く恥ずかしい思いをすることもあるが、本人が自身を偉いのだと思っている様子は見苦しいものだ。
精通している道については、慎重に言葉を選び、聞かれない限りは答えないでいるのがあるべき姿である。