徒然草・第94段
◇常磐井相国出仕し給ひけるに
こんなあっさり解雇されるのもある意味ひどい
西園寺実氏(さいおんじさねうじ・鎌倉時代前期の公卿)が出仕された際に、勅書を持った警護武士と出くわした。武士が実氏に敬意を表するため、馬から下りてしまったので、実氏はのちに「警護武士のなんとかという男は、陛下の勅書を持っているのにも拘らず私のために下馬した。この程度の心がけでどうやって陛下にお仕えすることができようか」と上皇に奏上したところ、この武士は任を解かれてしまった。
このような場合は、乗馬したままで勅書を上に高く掲げて見せねばならない。下馬してはいけないということである。
徒然草・第95段
◇箱のくりかたに緒を付くる事
- 細かいことにもいろいろしきたりやら何やらがあるもの
「蓋付きの箱の環に緒を取り付ける際には、箱のどちら側に付けるべきか」と、古いしきたりに詳しい人に尋ねたところ、
「左側につけるのと右側と両方の説があるので、どちらでも問題はない。手紙を入れる箱なら多くは右側に付く。日用品を入れる箱ならば左側に付けるのも一般的だ」と仰った。
徒然草・第96段
◇めなもみといふ草あり
- あんまり役に立ちそうにもない豆知識。むしろ実践してはダメ
めなもみという名前の草がある。マムシに噛まれた人は、その草を揉んで付けておくとすぐに良くなるとのことである。覚えておくべきだろう。
徒然草・第97段
◇その物に付きてその物をつひやし損ふ物
一瞬自己否定かと錯覚するような毒舌短文
その物にとりついて、その物を疲弊させて損じてしまう物は無数に存在する。身体にはシラミがある。家にはネズミがある。国には盗賊がある。愚かな者には財がある。君子には仁義がある。僧侶には仏法がある。