1分で読む現代語訳・徒然草

兼好らしい簡潔な著述
第211段「万の事は頼むべからず」

 徒然草・第210段
      ◇喚子鳥は春のものなりとばかり言ひて

  • 自然
    喚子鳥はカッコウ、鵺はトラツグミのこと

「喚子鳥(よぶこどり・かんこどり)は春の鳥」と言うけれど、どんな鳥なのかはっきり書いている文献はない。ある真言宗の仏典の中に、喚子鳥が鳴く時に死者の魂を呼び戻す方法が書いてあるが、これは鵺(ぬえ)という鳥のことだ。

 万葉集の長歌で「霞立つ、長き春日の~」と春の言葉のあとで登場しているので、鵺も喚子鳥に似て見える鳥なのだろう。
(※万葉集巻一・五「霞経つ長き春日の 暮れにける わづきも知らず 村肝の 心を痛み 鵺子鳥…」・霞の中で長い春の日が暮れていくように、わけもなく心が痛み、トラツグミのように泣いていると…)

トラツグミ
▲トラツグミ

 徒然草・第211段
      ◇万の事は頼むべからず

  • 必読評論
    何かをアテにして生きてはいけないと説く

  すべてのことをアテにするべきではない。愚かな人は過度にアテにし過ぎるので、アテが外れて恨んだり怒ったりするのだ。
  飛ぶ鳥を落とす勢いがある人でもアテにしてはいけない。強い者がまず滅ぶのだ。
  財産が多くてもアテにしてはいけない。瞬く間に金銭は消え失せるものだ。
  才能をアテにしてはいけない。才能ある孔子ですら時運には負けたのだ。
  人徳をアテにしてはいけない。顔回(がんかい・孔子の最愛の弟子だったが、若くして病死した)ですら不幸だったのだ。
  主君の寵愛をアテにしてはいけない。何かあれば即座に処罰される。
  部下をアテにしてはいけない。裏切ることがあるからだ。
  人の意志をアテにしてはいけない。人の心なんて移ろいやすいものだ。
  約束をアテにしてはいけない。信義が守られることは稀だ。

  自分自身のことも他人のこともアテにしないのならば、結果が良かった際には喜んだらいいし、結果が悪くても恨まずに済ませられる。
  自分の身体の左右の空き幅が広ければ他人にぶつかることはないし、身体の前後の間を空けておけば進路が塞がれることもない。狭ければ互いに押し合いへし合い潰れそうになる。
  心遣いできる余裕がないと、他人に反発して争い合うことになり、自分をも傷つける。心がゆるやかで柔軟な時ならば、髪の毛一本ですら傷つけられることもないだろうに。

  人は天地の霊である。天地は無限だ。なので人の本性も天地と何ら異なるものではないだろう。寛大な心で余裕を持っていれば、喜怒の感情に左右されず、物事に煩わされることもないのである。

怒り狂う男性

次回更新へつづく

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