徒然草・第116段
◇寺院の号、さらぬ万の物にも
キラキラネームとかダッセーと兼好も言っております
寺院の名前やそれ以外のいろいろなものに名前をつけるときに、昔の人は少しも凝ったりせずに、ただありのままに気安く命名したものだ。
けれど、昨今では深く熟考し、才覚を示そうと名付けるように見受けられるが、これは非常に煩わしい。人の名前にしても見慣れない漢字を使って命名することは、何の得にもならないことだ。
どんなことでも、珍奇なことを求め探し、通説とは異なるものを好むことは、浅はかな人が必ずやってしまうことである。
徒然草・第117段
◇友とするに悪き者七つあり
物をくれる人はイイ人です。まちがいない
友達にするには悪い者が7つある。1番目は身分が高く、やんごとなき人。2番目は若い人。3番目は病気をせず、身体が丈夫な人。4番目は酒を好む人。5番目は剛腕で勇ましい武士。6番目は嘘を言う人。7番目は欲の深い人。
良い友達には3つある。1番目は物をくれる人。2番目は医者。3番目は知恵のある友である。
徒然草・第118段
◇鯉の羹食ひたる日は
鯉にはコラーゲンが豊富に含まれているそうな
鯉こくを食べた日は、髪がほつれたり乱れたりしないのだそうだ。鯉は膠(にかわ・動物の皮や骨等を原料とし、これを水と共に加熱して製造した接着剤)の材料にもなるので、粘り気があるのだろう。
魚の中でも鯉だけは、天皇の御前でも切られて料理される魚なので、やんごとなき魚なのである。
鳥の中では雉が他に並ぶものがないほど立派な鳥である。雉や松茸などは宮中の御湯殿(おゆどの・天皇が沐浴する部屋)に掲げられているが、見苦しいものではない。そのほかの物を掲げるのは感心しないことだ。
中宮の御殿の御湯殿の上の黒い棚に雁が見えたのを西園寺実兼(さいおんじさねかね・鎌倉時代後期の公卿)がご覧になって、帰宅後すぐに手紙で「あんなものがそっくりそのまま棚に掲げてあるのは見慣れないことで、よろしくない。しっかりした人がお側についていないからこんなことをするのだ」と申し上げられたということだ。