1分で読む現代語訳・徒然草

悪人のおかしな理屈
第209段「人の田を論ずる者」

 徒然草・第207段
      ◇亀山殿建てられんとて

  • 必読故事
    迷信を真に受けない科学的(?)考え

  亀山殿(かめやまどの・後嵯峨上皇の別邸で現在の京都市右京区天龍寺)を建設する際に、地ならしをしていたところ、数えきれないくらいの大きな蛇がうじゃうじゃ密集して棲んでいる塚があった。
「蛇は土地の神だから」
と言って仔細を後嵯峨上皇に伝えたところ、
「ではどうすればよいのだ」
と逆に問い質されてしまった。
「古くからこの地に棲む神ですから、むやみに塚を掘って、蛇を捨てることは難しいでしょう」
と皆は申し上げた。

  しかし徳大寺実基(とくだいじさねもと・第206段で登場)ただひとりだけが、
「皇居を建てるというのに、天皇が統治する国土に棲む虫が、何の祟りを起こすというのか。鬼神はそんな邪な考えを持ちはしない。建設を咎めてはいけないのだ。塚を掘って蛇を全部捨ててしまうべきである」
と申し上げた。
  それならばと、塚を崩して蛇を大井川(おおいがわ・保津川)に流してしまった。

  全く祟りは起こらなかった。

渡月橋
▲保津川と渡月橋(京都市右京区)

 徒然草・第208段
      ◇経文などの紐を結ふに

  • 必読滑稽故事
    シンプル・イズ・ベスト

  経文の巻物の紐を結ぶとき、上と下からたすき掛けにして、二筋の紐の中から、紐先を横向きに引き出す結び方が一般的である。
  その結び方で結んだ巻物の紐を、華厳院弘舜(けごんいんこうしゅん・華厳院は仁和寺の別院。弘舜は鎌倉時代後期の僧侶)が解いて直させた。

  そして、
「こんな結び方をするのが昨今の流れのようだが、まったくみっともない。麗しい結び方とは、ただくるくる巻いて、紐の先を紐の下に挟めば良いだけなのに」
と述べられた。

  彼は昔の人なので、このような知識も持っているのである。

巻物
▲巻物(画像引用:神奈川大学21世紀COEプログラム)

 徒然草・第209段
      ◇人の田を論ずる者

  • 必読滑稽
    滑稽な悪人の論理

  田んぼの所有権を巡った裁判を起こして敗訴した者が、負けた妬ましさに、
「あの田んぼの稲を刈り取ってしまえ」
と、人に命じて行かせた。
  ところが彼らは目的地に着く前から、通りすがりの他人の田んぼの稲までも刈り取って行く。それを見た者が、
「ここは裁判をした田んぼではないのに、どうして勝手に刈り取っているんだ」
と言いたてたが、稲を刈る者どもは、
「裁判で負けた田んぼの稲だって、勝手に刈り取って良いはずがない。でもどうせ今から悪いことをしようとしてるんだから、どこの稲だろうが刈って奪わない理由なんてないだろう?」
と言う。

  なんとも愉快な理屈である。

稲刈りが終わった田んぼ

次回更新へつづく

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