徒然草・第2段
◇いにしへのひじりの御代の
質実こそすばらしい
昔の政治のありようも忘れ、人民の憂いや傾国に気づかないで派手な生活を送って偉そうにふるまう人は全く考えがない。
「装束から足回りまで、あるものを使い、美麗を求めてはいけない」と藤原師輔(ふじわらのもろすけ・平安時代中期の公卿)も言っている。
順徳天皇(じゅんとくてんのう・鎌倉時代前期の第84代天皇)も 「天皇の着物は粗末なものでよい」と書いているのだ。
徒然草・第3段
◇万にいみじくとも
吉田兼好の恋愛論
全てが優れていても、恋愛を好まない男はつまらない。
夜は訪ねる場所も決まらずにさまよい、親や周囲の声をはばかって思い乱れるものの、却って一人で過ごす夜ばかりで寝付けないといった風情が良い。
とはいえ、単に遊び好きで軽々しいと思われるようではよろしくないのである。
徒然草・第4段
◇後の世の事心に忘れず
- 一瞬で読み終わります
来世のことを心に忘れず、仏の道に近しいのは奥ゆかしい。
徒然草・第5段
◇不幸に憂に沈める人の
吉田兼好らしい思考回路?
不幸せで憂いに沈んだ人が軽々しく出家を思い立つのではなく、生きているのかどうなのかも判らないありさまで引きこもって暮らしているのは理想的だ。
源顕基(みなもとのあきもと・平安時代中期の公卿)が「流刑地のような辺境で罪人としてではなく普通の人として月を眺められたら良いのに」と言ったのはまさにそのとおりだ。
徒然草・第6段
◇わが身のやんごとなからんにも
子供は作らない方がいいそうです
身分が高い人でもそうでない人でも子供は作らないままでいるのが良い。
兼明親王(かねあきらしんのう・平安時代中期の醍醐天皇第十六皇子)も、太政大臣・藤原信長(ふじわらののぶなが)も、左大臣・源有仁(みなもとのありひと)も皆、子孫が絶えてしまうことを願っている。太政大臣・藤原良房(ふじわらのよしふさ)も「子孫はいないほうがいい。劣った子孫はよろしくない」と言っている。
聖徳太子も生前墓を築いた際に「ここを切れ、あそこを断て、子孫はないようにするのだ」と言ったのだとか。